平成22年11月9日掲載

      生物多様性会議(COP10)閉幕



   名古屋市で開かれていた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、遺伝資源の利益配分ルールを定めた新たな国際協定「名古屋議定書」と、2010年以降の多様性保全目標「愛知ターゲット」という二つの主要議題を採択、関連会合を含め約3週間の日程を終え閉幕した。

 微生物など遺伝資源の利用と利益配分や生態系保全の国際目標、通常は相対立する見解になる環境保護団体や産業界が、いずれも評価すると言う、まれな国際交渉となった。

 議定書は1992年の条約採択以来の課題、薬の開発に役立つ植物や微生物といった遺伝資源の利益を、原産国にも公平に還元する仕組みを定める。企業が動植物を勝手に持ち出す海賊的行為を防ぎ、配分した利益で途上国の保全強化を促す狙いもある。

 交渉は先進国と発展途上国が対立して難航したが、双方の主張を盛り込んだ議長案を提示。非公式協議で各国の意見をまとめ、合意を達成した。

 愛知ターゲットは20の個別目標で構成されている。このうち、最大の焦点だった保護区域の面積の割合では、陸域が少なくとも17%、海域が10%を保全することが決まった。国際自然保護連合の分析では、現在の海域の保護区は1%にとどまり、乱獲や開発が問題になっている。交渉では、先進国の日本や欧州が15%の目標を掲げたが、途上国は中国の6%など開発の防げにならない数値を提示。玉虫色の中間値で決着した。個別目標では「劣化した生態系の15%以上を回復する」「外来種の侵入を防ぐ」なども採択された。

◎ 愛知ターゲットの主な項目

  ・自然生息地の損失速度を少なくとも半減。

  ・水産資源を持続可能な手法で管理し、乱獲しない。

  ・農業や林業地域を、持続可能な方法で管理。

  ・侵略的外来種を特定し、侵入を防止し、根絶。

  ・サンゴ礁への気候変動や海洋酸性化の影響を最小化。

  ・少なくとも陸域の17%と海域の10%を保全。

  ・絶滅危惧種の絶滅を防ぎ、保全状況を改善。

  ・農作物や家畜の遺伝子の多様性を維持。

  ・劣化した生態系の15%以上を回復。

  ・気候変動対策に貢献。

  ・先住民と地域社会の伝統的知識を尊重し保護。


=今、6度目の「大量絶滅」時代=

 地球に生き物が誕生して約5億年になる。長い歴史の中で、多くの生きものがほぼ同時に死に絶える「大量絶滅」が5回起きた。火山の爆発や隕石の衝突、それに伴う気候や環境の変化などが原因と考えられている。今、地球は6度目の「大量絶滅」時代に突入したともいわれる。絶滅に歯止めをかけることはできないのだろうか。

 生き物の絶滅は悲しい出来事ですが絶滅の結果、生命の交代が、起きます。生き残ったものが次の時代に繁栄したり、新しい生き物が登場したりするんです。人間は他の生きものに対して、大きな力を持っています。今、6回目の大量絶滅の時代が始まっているそうですが、これまでの絶滅と決定的にちがうことがあります。過去5回は自然の現象によるものでしたが、今回は人間が原因といわれているんです。

 地球上には今、名前のついたものだけで約175万種の生きものがいる。未発見のものを含めると約3,000万種を数えるといわれる。国連の報告によると、化石の分析などから、近年の絶滅は自然の1,000倍のスピードで起きているという。絶滅数は年4万種にのぼるという説もある。過去5回の大量絶滅は数十万年とか数百万年の時間をかけて進行した。それに比べると、今の絶滅が非常に速いペースで進んでいるのは確かだ。

                                                    以上